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14世紀から15世紀初頭に掛けて中世末期の音楽写本は、特にクオリティの高いものは視覚的に優美であると同時にある種の険しさを備えている。符尾はあくまで垂直だし、音符は美しい縦長の平行四辺形を保ち、しかもそれに乱れがない。その向こうに眠っている流麗な音楽の流れや揺らぎを、押し隠しているような印象すら受けることがある。
今取り扱っているOxford, Canon.213 写本はそれとは印象が異なっている。写本に音符を書き込んでいた人物が楽しそうにしている顔が目に浮かぶようだ。高速で流れていく頭の中に鳴っている旋律、もしかしたら鼻歌を歌っていたかもしれない、その速度に音符を書くのが追いつかないという印象すら与えることがある。ここノッて書いてるんだろうな、とか全く学術的でないただの感覚に過ぎないのだが、そういう想像を働かせることが楽しいということは誰も否定できまい。
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