とはいえ、以前やっていた延々と中世の理論書を翻訳して行くという、誰が読むんだというブログ(実はこのブログは2回目の挑戦なのです)では翻訳しなかった箇所なので、まあ誰か興味のある人はいるかな、というくらいの軽い気持ちで行きます。かなり気楽に読む用の意訳なので、より正確を期したい人はTMLやHerlingerの本を見てくださいね。不必要と思った項も飛ばしてあります。
> このマークの後が私の書き込みです
2.5.7
まず、全音はそれ以上でもそれ以下でもなく5つに分割される。どういうことか以下に示す
2.5.8
全音は9という数の完全性によって成り立っている。これはものコードなどを使って証明することができる。
>ピタゴラス音律において全音は 9:8 の比率を持っているわけです。sesquiottava というわけですね。なにそれ何語??と思った人はココを読みませう。これ何対何だったかなってたまに忘れちゃう人のために図を貼っとくよ。
2.5.9
9という数字は2つの等量の数に分割できない
2.5.10
なぜならそれを拒むユニット(つまり9つのパーツ)に分かれているからだ。
>9-10はセットで1文になってる
2.5.11
実際、9という数字は2, 4, 6, 8 という数で分割することができない。
2.5.12
なぜなら奇数だからだ。
>こういう当たり前のことをこういう言い方をするのがいかにも理論書っぽい。
2.5.13
なので、分割した場合、それぞれのパーツは不等分になる。
2.6.14
2.5.15
というわけで全音は5つに分割され、それ以上にもそれ以下にも分割できないことがわかった。
2.5.16
そしてこれらが全音を構成していることがまず抑えるべき第1点である。
2.5.17.
第2セクション
2.5.18
4つのパートでは全音を構成することができないことがわかったわけだが、つまり5つ未満のパーツで構成されるものをセミトーン semitonia と呼ぶ。Semi とは不完全とかパーツという意味だ。
2.5.20
これらの全音の一部、またはセミトーンは音楽において、色づけされた不協和音程 (dissonantias coloratas) を通ってより完全なまたはより美しい協和音程へと導くためのものとして扱われる。
>dissonantias coloratasというのをMarchettoは musica ficta の意味で使っているようです。彼の他の理論書 "Pomerium" において彼は musica ficta を musica colorata と呼んでいます。
2.5.22
モノコードによって特に明白に観察できる通り、全音は5つに分割できる。
2.5.23
これら全音の5分の1 (quinta pars) のことを diesis 呼ぶ。
>ここにトリックがありますね。第1セクションでは、全音の5分割は 1/9 + 2/9*4 だったのですが、ここから5等分ということになっています。モノコードという実際に音を出す楽器に触れる段階で 1/9 単位での調整は技術的に難しいとともに、実際の音としての聞き分けにおいても5等分としてしまった方が実際的だったのでしょうか。
2.5.24
そしてこれが歌唱可能 (tono cantabili) な最小単位である。
>これは非常に興味深いです。理論書全体を見渡すと、この Lucidarium という本はとても実践的な本なのです。
2.5.25
Diesisが2つで enharmonic semitone になる。
2.5.26
Diesisが3つで diatonic semitone になる。
2.5.27
Diesisが4つで chromatic semitone になる。
2.6.2
Diesisは全音の5分の1だ。これは協和音程に向かう色をつけられた不協和音程(>つまり先ほど説明したmusica fictaを指します)3度、6度、10度において現れる。
2.6.3
上行する場合に最初に現れる分割の大きい部分を croma と呼ぶ。
>つまり 4/5 全音
2.6.4
残りを diesis と呼ぶ。以下に示す。
すごい例です。まず大胆な半音階。そして実際にこの chromatic な半音はかなり強烈な効果があります。特に6度のものはもう7度に近いので音がほとんどぶつかって聞こえます。3度の方は4度にかなり近いのでいったい何の和声なのか見失いそうになります。1音目から2音目にかけて半音だと頭の中で考えていると、むしろ跳躍したような感覚になるので旋律としてはかなり演奏しにくいです。
さて、有名なMarchetto da Padova の5分割全音を取り上げてみました。見て分かるように、最後の譜例を出したかっただけなので(笑)、この譜例の後 enharmonic / diatonic の説明もあるのですが、まあそれはいつか別の機会に取り上げることにします(笑
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