2015/03/09

3分薀蓄クッキング

拾ってきた画像を使って専門外のことに適当に薀蓄をたれる試み。

Facebookで一度シェアしたけどこの画像。
Luttrell Psalter, England ca. 1325-1340 (British Library, Add 42130, fol. 75v)

この画像の中で、最も当時の現実を反映していると思われるのは攻城の様子だ。守備側が花を投げて対抗するようなことは現実には起こりえないわけだけど、攻め手の様子が現実からかけ離れてしまっては、画像が「城を攻めている」という情報として意味を成さなくなってしまうからだ。

攻め手の様子は全体的には甲冑に身を包んでいるが、その攻め方は4種に分けられる。左側から剣による武装、開いた城門からの浸入、クロスボウによる遠隔攻撃、梯子による城壁の突破の試みである。

この中で私が興味を引いたのはクロスボウ。百年戦争中の戦闘においてイギリスはロングボウを用いてフランスに対して大打撃を加えていたので、いつの間にかイギリス=ロングボウという思い込みが出来上がってしまって、この絵を見たときまずそこが気になった。

ちょっと調べてみるとこの当時の遠距離武器としてヨーロッパ全体的にクロスボウが広く使われていたことが分かる。それはイギリスも同様でいわゆるロングボウは13世紀頃から本格的に用いられるようになったようだ。この絵はその武装の変化が起こった後に描かれているわけだが、武装の変化は既に起こっていても戦場のイメージとして遠距離武器にクロスボウがまだ思い浮かぶ時代だったのだろう。

ちなみに百年戦争中のフランスのクロスボウとイギリスのロングボウを比較検証した場合、クロスボウは機械仕掛けのため取り扱いの習得には時間が掛からない上に甲冑すら貫通する威力を持っていたが、実際の戦闘において速射という面においてはロングボウに大きく差をつけられてしまう。クロスボウが1発放つ間にロングボウは7発放つことができるという結果が出たそうだ(wiki)。
ここまで連射速度に差がついてしまうと、ロングボウによって張られた弾幕をかいくぐってクロスボウを撃つこと自体ができなくなってしまうことは想像に難くない。

弓の速射能力というと思い出す動画がある。イコノグラフィーからヒントを得て歴史的な弓術を研究・実践している人の動画。最後のほうに速射のシーンがあって、もちろんロングボウのような長距離射撃を念頭に入れた使い方ではないけれど、弓という武器がどのくらいのポテンシャルを持っていたのかよく分かる。

取り止めが無い感じだけど、今回はここまで。絵1枚がいろんな情報にアクセスきっかけになるのは快感ですね。クロスボウの歴史が思っていたよりずっと長いことにびっくり。



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